tacktack の ブログ

拓です。今度は少しは長く続くかな。

「深い」意図をシンプルにデザインする

 

パルテノンがなぜよい建物か。それを説明するためにいろんな角度から考えを整理することにしました。今は「デザインがよい」について、「デザインとは何か」の角度から見ています。

よいデザインには意図があり、それが達成されている。

では、パルテノンの意図とは? という問いになりますが、その答えは多様で複雑です。パルテノンはアテナ神に捧げられた建築です。アテナは都市国家アテネの守り神であり象徴です。アテネ市民統合と政治権力と統治の象徴でもあり、、、ということは専門の文献にあたればいくらでも出てきます。

 

そうした意図を俗な表現で言うと、人に「すごい」「かなわない」「ついていこう」と思わせることです。恐怖や強制ではなく、気持ちを内側から起こらせることが求められます。

 

「すごさ」だけならピラミッドや古墳のように、壮大さを競うことでも叶えられます。しかしそれだけでは民心をまとめて国家を統べるという意図は叶いません。

 

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パルテノンの素晴らしさを私は、複雑で多様な「深い」意図が、シンプルに受け止めやすく形作られていること、そしてそれは建築でしか表現できないものであること、と考えています。

深い意図はその達成がそもそも困難で、達成のためのデザインも難しくなります。アテネ統治という目標がパルテノンによって達成されたとは言えませんし、当時の民衆がこのデザインを受け入れていたかどうかも疑問です。ただ「深い」意図を基によくデザインされ、エネルギーを投入されたものは長い時間に耐えて残ることを、パルテノンが実証しています。以降、またもう少し小分けにして行きたいを思います。