tacktack の ブログ

拓です。今度は少しは長く続くかな。

「よい」デザインは「よい」結果とは関係がない。

「デザインする」とは、目的達成のために意図をもって行動すること。

「よいデザイン」とは、意図された通りのリターンが得られたデザイン、と書きました。

この意図のことを、「コンセプト」といいますが、この言葉はここでは使わないことにします。

 

言葉を抽象化することで、別の角度からものが見られるようになる一方で、イメージが拡散しすぎてテーマが分からなくなることもあります。また抽象的な思考に慣れていない小中学生や私の両親などには伝わり難くなることも心配します。便利な用語を改めて見直す、という意味からも、文中に用いる単語には注意を払っていこうと思います。

 

さて、先述の例を使えば、よいデザインは、よい結果をもたらします。喫茶店であればたくさんのお客さんを、基準や標準(standard)であればたくさんの参加者を、スポーツならば得点やチャンスの拡大を得ることができるでしょう。

 

ここで、「よい」に注意することにします。前言を翻すようですが、「よい」デザインは「よい」結果とは関係がありません。ここで言う「よい」とは「善」のことを指します。

 

例えば大量破壊兵器は、文字通り大量に破壊することを意図してデザインされた兵器です。意図したリターンとは多くの被害や死をもたらすことです。

 

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ヒトラーの演説は、その内容が危険で人道的に間違っていると理解されている現代においてさえ、人の心を引き付ける力を持っています。演説の口調ばかりでなく衣装、表情、取り巻きの配置、タイミングなど、それら全てが見事に「よく」デザインされており、民衆を盲従へと導く目的に叶っていました。第1次大戦以降困窮したドイツにあって、歴史上まれにみるリターンを、最悪の形でもたらすことになってしまいました。

 

デザインのよしあしは目的の善悪とは分けて考えます。個人的な好き嫌いも、排除します。一方でデザインが意図するリターンがしばしば人間の賛成を得ることや消費行動、従属行動であるため、心理学や行動学とも関係づけられて語られることが多いようです。今整理しておきたいことは、心理学や行動学との連携はあくまでもデザイン技術。技量の問題であって、デザインする意図とは関係がない、ということです。