「分かり易い」デザイン
分かり易いデザイン、とは、多くの人が共感できるデザインと言い換えてよいでしょう。共感には一時の流行や今の気分などの意味も含んでしまいますが、もっと根源的な、いかなる時代、文化圏の元でも人間が持っている、生きるために必要な感情、と、大げさに定義しておきます。
今、「深いの反対」の説明を試みています。では、分かり易いデザインとはどんなものでしょうか。
例えば、「食事」を例にとります。「食事」は多様な要素が含まれた「深い」テーマです。ここに100人の読者がいたら、同じシーンを思い浮る二人はまずいないでしょう。
場所、空間、テーブル、椅子、姿勢、メンバー、マナー、料理、食器、食品、味、調味料・・・これらが、多様さ、複雑さであり、「深さ」の要素です。
ではこの中から皿を取り出します。
日本でも中国でもフランスでも、食事は皿に盛ります。
円形で真っ白で、ふちが少しだけ上がっている形は、料理や文化を問わず重宝するでしょう。
釉薬や焼き物が存在しない時代にさかのぼれば、木をえぐった椀状のものや、葉っぱなどが用いられたことでしょう。
皿を使う、皿をあの形にする意図は何か。
床やテーブルよりも衛生レベルを上げること、
食品を適量盛ること、
他の食品と混ざらないようにすること、 など、
この問いには、文化や時代背景や人の好みに関わらず、根源的には同じ回答が来ることが想像できるでしょう。それが意図の「分かり易さ」です。
皿の根源的意図は共有されつつも、そこにほかの意図、例えば個人の好き嫌いや
食品との取り合わせ、制作環境、収納条件などが加味されて形状や色柄にバリエーション、つまり「深さ」が生まれてくるのです。
「深さ」と分かり易さについて、うまく説明できているでしょうか。
当たり前のことを改めて問い直して文章を書こうと思うと、どうしても理屈っぽくなって、筆が止まります。
少し、個人的な体験と趣味に基づく話も書いてみます。